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特集 2

まるでロケ地? 異世界に迷い込む大分市のミッドナイト空間

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大分イチの繁華街、都町の夜を彩る〈白銀ビル〉で「弥栄(いやさか)!」

大分市随一の歓楽街として名高い都町。細い路地の隅々にまで多種多様な飲食店がひしめきあい、夜が更けるほどにこのまちは熱気を帯びていきます。そんな大分のナイトスポットにおいて、このビルを知らずして都町を語れないと言われる激アツスポットがあります。それが、ジャングル公園を臨む角地に建つ〈白銀(しろがね)ビル〉。

建物がある「白銀通り」の名に由来するテナントビルの中には、レストラン、バー、スナックから気軽な居酒屋までざっと30軒以上の店がひしめき合い、まるで夜のまちを支配する要塞のごとくそびえています。

けれど一度足を踏み入れれば、世界は一変。堅固な外観からは想像もできないようなカラフルなペイントの壁、いかにも個性的な装飾の扉が連なり、その先に広がるであろう、めくるめく夜の始まりに否応なしに期待が高まります。

カラフルに塗られた廊下。ビル内はまるで迷路のようなつくりで、迷いながらお目当てのお店まで辿り着くのも一興です。

この趣向はビルオーナーによるもので、内装はもちろん、出店しているテナントの選定にもとことんこだわっていると言います。

「この界隈は、かつては割烹旅館などが立ち並び、ビルが建った昭和40年代頃は宴会のメッカとして大変な賑わいでした。その後不況の煽りを受けて、私が先代である父からビルを引き継いだ頃には、テナントもガラガラで幽霊ビルのような状態でしたね。かつての盛り上がりを取り戻したくて、自分が通いたいと思える飲食店を揃えた総合プロデュースに乗り出したんです」とビルオーナー。

吹き抜けがあったりと複雑な構造で、異空間に迷い込んだよう。

というわけで、今回は白銀ビルの個性豊かな3軒のハシゴ酒に繰り出します。ここでの乾杯の号令は「弥栄(いやさか)!!」。栄えあれ!という意味だとビルオーナーが教えてくれました。扉の先に待ち受ける、美酒美食とディープな出会いを求めて、いざ、不夜城へ潜入。 

真夜中に本格フレンチに舌鼓〈Brasserie Hirondelle(ブラッスリー イロンデル)〉

まず扉を開けたのは、昨年オープンしたばかりの〈Brasserie Hirondelle(ブラッスリー イロンデル)〉(白銀ビル3階)。カジュアルなアラカルトから本格的なコースまで楽しめるお店です。

ブラッスリー(フランス語でお酒と食事を楽しむ店)の名のとおり、お酒の品揃えは抜群。樽生が楽しめるその日のクラフトビールに始まり、フランスワイン、ポルト、マール、マディラ、コニャックにカルヴァドスまで。食前、食中、食後酒までフルコースで楽しめる上質なアルコール類が勢揃いです。

「特にフランスワインを中心に、とっておきをご用意していますので、しっかりお酒を楽しんでもらえたらうれしいですね」と、シェフの五嶋竜一さんも話します。

18時からのコースは予約制ですが、21時以降はアラカルトでカジュアル使いがOKといううれしさ。料理はどれも素材の旨みをしっかり引き出し、塩気ではなく味わいの深さゆえにグラスを誘うのだから、食いしん坊にはたまりません。

シェフ自慢の手づくりシャルキュトリーがたっぷり詰まった、前菜のおまかせ盛り合わせ(1500円)はボリューム満点です。酒のつまみにぴったりで、このひと皿でワインが何杯も進む勢いです。

肉、魚とガッツリ系のメインから本日のリゾットまで平らげれば、胃袋も心も大満足。けれど、デザートは別腹です。
「うちのはひと味違うと思いますよ!」という五嶋シェフの声に導かれるまま、焼き立てフィナンシェ(6個900円)をぜひ。

実は隠れファンが多いのがスイーツだそう。注文を受けてから焼き上げるというフィナンシェ。ほんのり温かく、サクッ、ふわっとした新感覚の食感で、マールやコニャックとのマリアージュも最高です。

おひとりさまでも入りやすいカウンター席がうれしい。

「私自身、知り合いがこのビルでお店をやっていたということもあって出店を決めたのですが、こぢんまりしていながら適度な開放感のある空間も気に入っています。このビル内は飲食店同士の横のつながりもあるので、席が空くまで隣の店で一杯、なんて使い方をしてもらえたり、営業終わりで別のお店のスタッフが飲みにきてくれるのも楽しいですね」

窓の外に都町の賑わいが見えるのも、ちょっとした開放感を感じるポイント。

料理と向き合いながら、ゆっくりワインを堪能する時間は格別ですし、カウンターでさらりとワインを嗜んで、2軒目に繰り出すのもいいでしょう。あるいは2軒、3軒と飲み歩き、デザートのために舞い戻る人もしばしばだそうです。

店舗情報

店舗名:Brasserie Hirondelle ブラッスリー イロンデル
住所:大分県大分市都町2-5-13 白銀ビル3階
TEL:097-537-1223
営業時間:20:00~翌3:00(2:00L.O.)※コースは18:00〜21:00予約のみ
定休日:日曜、ほか不定休

本国のお墨付き名人が注ぐ、ビアパブ〈VIVE LA VIE(ビブラヴィ)!!〉

大分では珍しい樽生ギネスと樽生ハイネケンが飲める〈VIVE LA VIE(ビブラヴィ)!!〉(白銀ビル3階)は、アイルランドにあるギネス本社が認める、日本でも数少ない「GUINNESS Perfect Pint」認定の店。ビール好きの間では名の知られた隠れた名店です。

そのうえマスターの髙橋範彦さん、通称マチオさんは、アイルランドのダブリン最古のパブといわれる〈The Brazen Head〉(1198年設立)でビールを注いだこともあるという、とんでもない経歴を持ったビールマスターなのです。

さりげなく〈The Brazen Head〉のPerfect Pint認定書が。ほかにギネス本社の認定書も飾ってありました。

「ビールマイスターを目指していたわけではないのですが、ビールが好きで若い頃からアイリッシュパブで飲み歩いていて、国内外でいろんなパブを訪れては飲んで、注いで……。オランダではハイネケンのVIPバーで、世界のビール好きを前に注いだこともありましたね。ビールのサーブに関しては、世界の誰にも負けませんよ(笑)!」

終始にこやかな笑顔でビールを注いでくれるマチオさん。物腰やわらかで飄々とした人柄ですが、これまで何千杯と注いできた技術とビール愛に裏打ちされた自信は本物です。

特にギネスは、「カスケードショー」と呼ばれる、グラスに注ぐと現れる細かい泡が下から上へ昇る現象が特徴ですが、泡の上昇時間はその日の室温などにも左右され、ビールの味わいにも影響を与えます。きめ細かな泡こそマイスターの証。実は繊細な技術が求められる熟練技なのです。

フリーハンドで描かれる三つ葉のクローバー「シャムロック」(アイルランドの国花)は、樽生ギネスの称号です。1パイント900円。

店内にはお酒が進む音楽や映画、文学、アートとヨーロッパ色満載で、年齢問わずカルチャー好きの客たちも集います。マチオさんをはじめ個性的なスタッフの人柄と、ここでしか味わえないビールの味を求めて、夜深くまで賑わう一軒。「ビールを注ぐのがめちゃくちゃ好き!」と言うマチオさんが注ぐビールは、確かにひと味もふた味も違います。その味わいをぜひ、自身の舌で確かめてみてはいかがでしょうか。

ギネスとハイネケンのハーフ&ハーフが飲めるのは、世界的にも珍しいのです! 800円。

ドイツ産のオーガニック麦芽をローストした自家製おつまみは、ビールのお供に最高です。

店舗情報

店舗名:VIVE LA VIE!! ビブラヴィ
住所:大分県大分市都町2-5-13 白銀ビル3階
TEL:090-1343-3155
営業時間:21:00~翌2:00
定休日:不定休

ゆっくりお酒を楽しむ大人のバー〈BAR VISIONE(バール ビジオーネ)〉

最後に辿り着いたのは、イタリア語で幻想の意味を持つ〈BAR VISIONE(バール ビジオーネ)〉(白銀ビル3階)。扉の奥には、歓楽街の喧騒を忘れさせるようなしっとりとした大人の空間が広がっています。

24年ほど前にビルオーナーが立て直しを図り、いまのような活気を取り戻した白銀ビル。その第1号店となったのがこちらのバー。名実ともに白銀ビルの重鎮といった趣です。

店内に入るとまず迎えてくれるのがシックなカウンター席。

「アンティークの家具や照明を設えていますが、内装にはビルオーナーのアイデアもふんだんに取り入れているんです。この地で24年経ちましたが、地元のお客様のみならず、県外からも出張のたびに足繁く通ってくださる方も多くて、うれしいですね」と、マスターの亀井正男さん。

内装には随所にこだわりが。

ゆったりとしたカウンター席の奥には中庭に抜けたテーブル席やゆったりとしたソファ席も揃います。バーとは思えない広々とした空間には、若いカップルからスーツ姿の渋い紳士まで多様な客を迎え入れる懐の深さがあります。

こだわりの内装はレストルームにも。

オーセンティックなバーに則って、クラシックカクテルを中心にスコッチやブランデーなど上質な蒸留酒が揃い、シガーを嗜む客も多いそうです。和やかさのなかに一本筋が通った佇まいの亀井さんがシェイカーを振る、おすすめのカクテルをいただきます。

りんごからつくられるブランデー「カルヴァドス」を使ったショートカクテル「ジャック・ローズ」1300円。

心地よく響くイタリアオペラの音楽と煙を感じながら、静かな酔いに身を任せれば、ここが歓楽街のど真ん中であることをつい忘れてしまいそう。オープン直後から席が埋まり出すので、気兼ねなくゆっくり過ごすなら深夜の時間帯がおすすめです。たまにはこんな非日常の空間を楽しむのもいいのではないでしょうか。

店舗情報

店舗名:BAR VISIONE バール ビジオーネ
住所:大分県大分市都町2-5-13 白銀ビル3階
TEL:097-534-8086
営業時間:19:00~翌2:00
定休日:日曜・祝日(金、土曜が祝日の場合は営業)

3軒のハシゴで大満足の白銀ビルですが、まだまだ名店が目白押しです。0次会から2次会、3次会まで、一晩中でも過ごせてしまう、まるで異世界ファンタジーのダンジョンのごとき迷宮感。入り組んだ廊下を迷いながら、ときには隣り合ったお客さんとの親交を深め、大分のミッドナイトを満喫してはいかがでしょうか?

※価格はすべて税込みです。

Credit text & photo COLOCAL(マガジンハウス)
文・西野入智紗
写真・ただ(ゆかい)

MIDNIGHTOITA