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特集 7

まだまだ語り足りない夜に。大分市の「夜カフェ」時間

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大分のまちで夜のコーヒーブレイクを

せっかくの大分旅行だからこそ、旅の時間は1分でも長く満喫したいもの。夕食後にまだまだ友人と語り足りない人もいれば、ひとりでゆっくり過ごしたい人もいるはず。そんなとき、お酒が苦手な向きはもちろん、幅広いニーズを受け入れてくれるのがカフェという存在。実は、大分市内には個性豊かな夜カフェが点在しているんです。カフェで多様な夜時間を楽しんでください。

カフェ×語学×カルチャーに触れられる唯一無二の世界観

最初におすすめしたいのが、〈10 COFFEE BREWERS〉。ここは築50年ほどの雑居ビルの2階に店舗を構える隠れ家的なロケーションが特徴です。狭い路地を入り、階段を上がって店に入ると、広々とした空間が広がります。

レジの前に設けられたテーブルにはアーティストによる作品が並んでいました。どれもカラフルで、ポップ。思わずテンションも上がります。

もともと保育園を営んでいたという、カフェ業界では珍しい経歴を持つオーナーの川平大介さん。教育の現場に携わっていたからこそ、カフェの開業においても知育的な要素を盛り込むことを決めていました。

「すべての出口は、どこかの入口」。まさにこの空間にぴったりなひと言。

カフェのコンセプトは「カフェと語学とカルチャーと。」。このカフェという空間にさまざまな文脈を付与するのが〈10 COFFEE BREWERS〉のスタイル。例えば、定期的に企画展を実施するなど、ギャラリー的な機能も備えた場所になっています。また、就活カフェや留学カフェという試みも。

テーブル席がメインなので、グループでの来店にもおすすめ。

提供するコーヒーには、地元・大分市内の〈Coffee Shop haze〉、そしてカフェ開業前から交流があったという福岡の〈REC COFFEE〉より仕入れた豆を使います。

スイーツは常時5種以上をラインナップ。特に人気なのが、イギリスの伝統的なレシピでつくる「イートンメス」。ふわふわ、サクサクの食感が心地よい焼いたメレンゲ、たっぷりのクリーム、季節のフルーツ(取材時はイチゴ)が彩りを添える、見た目にも華やかな一品です。

イチゴをたっぷり盛り付けたイートンメス。写真右は、オレオを合わせたチョコレートベースのエスプレッソドリンク「オレオパニック」にさらにオレオをトッピング。

「Wi-Fiを完備しているので、ゆっくり過ごしてもらえると思います。うちは長居も大歓迎です」と笑顔を見せる川平さん。ゆとりをもって配されたテーブル&チェアのほか、窓に向かって座るカウンター席もあるので、グループではもちろん、夜の時間にひとり、ぼんやりしたいときにもおすすめですよ。

店舗情報

店舗名:10 COFFEE BREWERS
住所:大分県大分市中央町3-6-13 ロキシー 2F
TEL:非公開
営業時間:11:30〜24:00
定休日:不定休
WEB:https://shop.ten-coffee.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ten_coffee.oita

8種ものオリジナルブレンドがお待ちかね

〈10 COFFEE BREWERS〉と同じく、築年数が半世紀を越えたレトロな雑居ビルに店を構える〈Coffee Shop haze(ハゼ)〉。味わいのあるドアの取っ手を引き、店に入ると、なんともいえないほろ苦い、コーヒーのいい香りが鼻腔を駆け抜けていきます。思わず目を閉じ、息を大きく吸い込んでいると、店主の野尻健一さんがにっこりと微笑み、声をかけてくれました。

「いい香りでしょ。さっきまで焙煎をしていたんですよ。やっぱり直後は香りが立ち込めますよね」。店内はカウンター席が5席。そのほかはこのレトロなビルに似合うテーブルとチェアが用意されています。

入口側の壁に広がるタイルに一目惚れして、この物件に決めたという野尻さん。

野尻さんがこの自家焙煎のカフェ〈Coffee Shop haze〉を開業したのは13年前のこと。もともとは営業職のサラリーマンでした。

「実家が喫茶店をしていたので、コーヒーとは昔から縁があったのですが、私自身、ずっとコーヒーが好きではなくて」と苦笑い。そんななか、野尻さんの姉がカフェを独立開業することになり、ひょんなところからその立ち上げを手伝うことになりました。好きではないながらも、実際に店舗で体験することで、知識と経験を得ていきます。

好きなスイーツを選べる「ケーキセット」の一例。写真は「チョコのしっとりケーキ」。セットの場合、コーヒーは野尻さんが最初につくり上げたオリジナルブレンド「1」になります。

そんな野尻さんに転機が訪れます。それが焙煎。これまでコーヒーが苦手だった人生を歩んできた野尻さんでしたが、自分で豆を焼き、試飲するようになると、時折、好きな味のするコーヒーに出合うようになります。

「コーヒーは豆自体の味の違いだけでなく、煎り方でがらりと風味が変化することを知ったんです。私が苦手だったのは酸味の強い味だったので、浅煎りではなく、中煎りや深煎りでローストして苦味を加えることで、心から『おいしい!』と思える味になりました。『自分が好きなコーヒーをつくろう』と試行錯誤しているうちに、どんどんコーヒーの魅力にのめり込んでいったんです」

姉の店から独立し、2010年にこのhazeを開業。屋号の「haze」とは、コーヒーを焙煎するときに豆がはじける「爆ぜる」に由来します。焙煎こそ、野尻さんのコーヒー人生における原点です。

ぜひ飲んでほしいのは8種から選べるオリジナルブレンド。1〜8の数字は、メニュー入りした順のアーカイブになっています。最初に生まれたオリジナルブレンド「1」を飲むと、酸味が抑えられている一方で、苦味はやわらかく、コーヒーの旨みが口いっぱいに広がりました。

夜はゆっくりとした時間が流れているという野尻さん。

「この界隈はオフィス街なので、お昼どきは1分、1秒を争うくらいの忙しさですが、夜は仕事帰りの方が豆を買いに来がてら、ちょっとコーヒーを飲んでいく感じでしょうか。私自身もホッとひと息つける時間帯なので、一緒にくつろいでいってほしいですね」

オリジナルブレンド「1」に次ぐ人気ブレンドはコーヒーの苦味が強調された「7」。

店舗情報

店舗名:Coffee Shop haze(ハゼ)
住所:大分県大分市大手町2-11 那賀ビル 205号
TEL:097-576-7288
営業時間:11:30〜20:30LO
定休日:日曜
Instagram:https://www.instagram.com/coffee.shop.haze/

本好き、カフェ好き、どちらにも響く場所

ひとり、もしくはふたりでの来店なら、ブックカフェ〈Bareishoten〉はいかがでしょうか。開業は2021年。まさにコロナ禍の真っ只中でした。店主の後藤邦孝さんはもともと、東京のブックカフェで経験を積み、地元の大分へとUターン。戻ってきた大分では本屋で働いていましたが、その本屋が閉店することに。

「本に触れるのが幼い頃から好きでした。だから、本屋がまちからなくなっていくことが耐えられなかったんです。勤めていた本屋が無くなり、ほかに働きたい本屋もない。それなら自分でつくるしかないと思い、開業を決めました」

店内にはおよそ4000冊の本が並びます。

ただ、本屋をずっと見続けてきたからこそ、後藤さんには「本屋だけでは、いずれ立ちゆかなくなる」という危機感がありました。本屋と組み合わせられる何か。その答えがカフェだったのです。

「本が好きな人だけにしぼりこんでしまうと店としての間口は狭くなってしまいますよね。本が好きではない人にとっても、来たくなる場所。そんな店をつくりたかったんです。来店してもらうことで、ゆるやかに本との接点がつくれますから」

本と飲食スペースが物理的にも近い位置に。

こうして構想したブックカフェ。そのカフェにおけるメニューづくりにおいても、「本」が後藤さんの力になってくれました。例えばスイーツ。後藤さんは昔から趣味でケーキづくりをしていたそうですが、その先生は「レシピ本」でした。試しているうちに、どんどん応用できるようになり、今ではスイーツは人気商品に。

はちみつのやわらかな甘さがミルクの風味とともに体にすっと溶け込んでいく人気コーヒー「ハニー・カフェ・コン・ レーチェ」。4層仕立てで見た目にもキュートです。

販売するのは、新刊のみ。後藤さんの目利きが光るセレクトに思わず目が止まり、手が伸びます。

「固定のジャンルに特化しているということではありませんが、海外文学と歌集、あとはエッセイに力を入れています。最近は短歌の本が売れていて、お客様に僕の気持ちが届いているように思え、うれしいですね。でも、歌集は本当に好きなジャンルなので、売れなくても置き続けたいと考えていますよ。逆にどんなに売れるとしてもビジネス本は置かないですね。この店では仕事を忘れてほしいですから。自分で店をするって、きっと、そういうことでしょ」

基本的には毎日22時まで営業。水曜は特別に24時まで営業時間を延長し、グランドメニューのほかに、スープが品書きに加わります。

「僕がお酒も好きなもので、ついついメニューも増えてしまって。夜は飲みながら本を味わってほしいですね」と笑顔を見せる後藤さん。お酒好きにとっても、至福の夜喫茶タイムになること間違いなしです。

ケーキだけでなく、手づくりのサンドイッチも好評。コーヒーのおともにいかがでしょう。

店舗情報

店舗名:Bareishoten
住所:大分県大分市金池町2-13-13 リザータ金池102
TEL:090-9484-4542
営業時間:12:00~22:00、水曜のみ18:00~24:00
定休日:月・火曜
WEB:https://bareishoten.com/
Instagram:https://www.instagram.com/bareishoten/

人、モノ、コトをマゼる、これからの時代のカフェのかたち

最後に紹介したいのが〈mazeru〉。店は50年以上にわたってこの大分のまちを見守ってきた雑居ビルの3階にあります。ドアを開くと、コンクリート打ちっぱなしの空間に、ゆったりと席が配してありました。

mazeruの設計は静岡県を拠点に活動する建築事務所〈CHAB DESIGN〉が手掛けました。

「こんばんは!」と爽やかに声をかけてくれたのが、オーナーの井上龍貴さん。クリエイティブ分野の仕事に興味をもち、大分県・玖珠町の「地域おこし協力隊」へ。自らのアイデアをかたちにしていくという、現在の井上さんの原点になる活動を経験。その後は関東でまちづくりの仕事、企業のブランディング、プロデュースサポートに従事し、「地元の力になりたい」と大分市へとJターンしました。

バターケーキやスコーンといった焼き菓子は常時10種前後を取り揃えています。看板商品・ソフトクリームの副産物として生まれたプリン、カヌレも今やmazeruの名物に。

こうして誕生したmazeruは、もちろんカフェではありますが、井上さんのクリエイティブ活動のための拠点という側面も持つ複合スペースです。店内を見渡すと、国内外のアーティストによる作品も展示販売してあります。

屋号のmazeruとは「混ぜる」「交ぜる」の意味があり、人やモノがこの場所、井上さんというフィルターを通して科学変化を起こしてほしいという願いが込められています。

そのため、大分に暮らす人々にとって、より刺激になるという観点から、立ち上げ時はあえて大分在住のアーティストの作品は置きませんでした。そのチョイスにも一本、まっすぐな筋が通っています。今後は少しずつ大分の作家さんも取り扱う予定とのこと。

キャラメル、クッキー&クリームなど季節がわりで4種前後のアイスから選べる「アイスクリーム」(写真はダブル)、写真左は「チャイティー」(写真はアイス)。

カフェにおいても一切の妥協がありません。井上さんは「良くなるとわかっているなら、そうしないではいられない」人。例えば、今や名物になっているアイスクリーム(時期によってはソフトクリームを提供)は、注文後に、そのコーンを一枚一枚、手焼きするという力の入れようです。

「焼きたてのおいしさを知ってしまったら、もうつくり置きはできなくなってしまって」と苦笑いする井上さん。香ばしい香りとともに、サックサクの食感をもたらすコーンは、アイスクリームの味わいも引き立ててくれました。「チャイティー」に用いるチャイシロップも当然、自家製。スパイスの配合から煮詰める時間、過程を何度も調整し、完成させた自慢のレシピで仕上げています。

井上さんを取り巻く仲間たちとのよい関係性が店の随所にあらわれていました。

空間も、スイーツも、そしてドリンクまでも、五感を刺激してくれるmazeru。
ここで過ごす夜の時間は、きっと明日への活力になりますよ。

店舗情報

店舗名:mazeru
住所:大分県大分市府内町3-5-17 第一石松ビル3F
TEL:080-4315-0521
営業時間:11:00~20:00
定休日:月〜金曜(現在、土日のみの営業)
Instagram:https://www.instagram.com/mazeru_urezam/

ブック&カフェからギャラリー&カフェ、自家焙煎カフェまで、今回、ピックアップした夜カフェはまさに“四者四様”の魅力を持った店主たちの笑顔が印象的でした。

地元密着のカフェには、ネットだけではわからない地元ならではの情報も集まってくるというもの。夜カフェで情報をキャッチし、翌日巡ってみる。そんな大分の旅は、きっと忘れられない思い出になりますよ。

Credit text & photo COLOCAL(マガジンハウス)
文・山田祐一郎
写真・大塚淑子

MIDNIGHTOITA